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ドローンが戦争を変えたように、AI はソフトウェアを変える

度々聞いていることをアプリにし、囲い込まずにスキルを公開し、自分で守る

ドローンが戦争を変えました。安いドローンで、少ない人数でも、偵察や攻撃ができるようになりました。前は、高い飛行機と大きな軍が要りました。

AI は、ソフトウェアの開発と運用を、同じように変えます。前は、開発の会社や IT の部署が要りました。いまは、一人でもできます。個人が、自分の仕事のアプリを作り、自分のサーバーを動かし、会社や団体の仕組みを作る仕事も引き受けられます。

守りも同じです。戦場では、守りを集めた高い兵器や大きな基地ほど、安いドローンの的になりました。IT でも、たくさんの会社のデータを集めた大きなサービスは、1 回破れば大きく得られる的です。攻撃が多くなるほど、大きな仕組みは守りにくくなります。守る所が広く、関わる人が多く、直すにも時間がかかるからです。そこに預けていると、破られたときに、預けた人がまとめて止まり、まとめて漏れます。

だから、自分の側に置くだけでなく、自分で守ります。管理者の ID を自分で持ち、更新し、外に開いている口を自分で確かめます。いつも注意して、何かあれば、すぐに直します。小さな仕組みなら、それができます。前は、一人ではその力がありませんでした。いまは、AI が設定を書き、点検し、直し方を示します。自分で守れるようになったから、自分の側に置けるのです。

この記事では、そのために私がこの数週間にしたことを、5 つに分けて書きます。

  1. 度々聞いていることを、アプリにする
  2. AI はソフトウェアの開発に使い、自分の仕事のアプリを作る
  3. 囲い込みをやめる
  4. 会社や団体にも売れるように、会社の仕事を知る
  5. エージェントを、集中型でなく分散型にして、使えるようにする

1. 度々聞いていることを、アプリにする

AI との会話の履歴には、何度も同じことを頼んでいる所があります。そこから、要るアプリが見えてきます。ただ、すぐに作り始めるのではなく、次の順に進めます。

  1. 履歴から、AI に何度も頼んでいることを見つける
  2. AI に、今あるアプリを探してもらう
  3. そのアプリに不満な所があれば、どう良くするかを考える
  4. 開発者に要望を書くか、自分で作るかを決める
  5. 自分で作るなら、AI に今あるアプリの課題を集めてもらう
  6. 作るアプリの決まり事(SKILL.md)と集めた課題から、設計書と利用者マニュアルを作る
  7. 設計書どおりに、AI に実装させる
  8. テストする。直す所が出たら、決まり事、設計書とマニュアル、アプリの順に直す

同じ直しを繰り返している物(「余計なことを書かない」など)は、アプリにせず、AI への決まり(CLAUDE.md やスキル)に書きます。

やり方は、ふだん使っている AI に、aiai の手引き「度々聞いていることを、アプリにする」を読ませて頼むだけです。今あるアプリの調べ、どう良くするかの対話、課題集め、設計書と利用者マニュアル作り、テストの手順作りは、aiai のサイトで Gemini にも頼めます。aiai の中にも、何度も頼んでいたことをアプリにした物があります。毎朝のニュースの下書き、サーバーの攻撃の点検、出典の点検、読まれ方のまとめです。

長所は、物を作っていく中で分かっていきます。aiai を作る中の私のやり取りから、AI が挙げた長所は、たとえば次のような物でした。

  • 方針がはっきりしていて、決めるのが速い。 「ここで作るのは、最小限で、あとはユーザーが追加すればいい」。提案をそのまま足した AI には、「なんでも受け入れるな」
  • 本質を短い言葉で言う。 「責任と手間が収益のもとです」「Google の価値がどこにあるか考えるべきでしょう」
  • 人に頼らず、自分の側に置く。 「これからの時代は、自分でやれよ」「AI に監査させればいい」
  • 運用の感覚がある。 開発の場所と動かす場所を分ける。「記憶できないので」パスワードを決めた場所に置く
  • 間違いをすぐ直す。 「Oracle は間違い。Nvidia」

自分では当たり前だと思っていたことが、長所として並びました。

履歴からは、長所だけでなく、性格や向いている仕事も見えてきます。何を削り、どこで直し、何を自分で決めたか。その積み重ねから、AI は、方針を決めて作らせる仕事が合うのか、決まった手順をていねいに進める仕事が合うのかを示します。

長所が分かれば、何を仕事にするかを決められ、それをスキルに書けます。これが、次の節からの土台です。

2. AI はソフトウェアの開発に使う。自分の仕事のアプリを作る

AI(LLM)がやれることは、思われているほど多くありません。その中で、いちばん得意なのがソフトウェアの開発です。この分野では、プロの開発者よりも優秀です。設計を読み、コードを書き、試験を書き、直します。速く、休まず、知っている範囲も広い。実務に AI を使うなら、まずここに使います。

アプリは、もう簡単に作れます。コードを買う、書く人を雇う、持つ会社に頼む、のどれも要りません。値打ちがあるのは、「何を作り、何を守り、どう確かめるか」を、自分の言葉で書いた物です。それがスキル(SKILL.md)です。AI にスキルを読ませると、AI が、その人に合わせて作ります。

そこで、個人が自分の AI と一緒に使う手引きを、aiai(https://aiai.aiseed.dev/)として公開しました。中心は、1 節の「度々聞いていることを、アプリにする」の流れです。何度も頼んでいることを見つけ、今あるアプリを調べ、要望を書くか、自分で作るかを決め、作るなら設計書と利用者マニュアルを作ってから実装し、テストします。自分で作ると決めたときには、事業の Web サイトや、取り置きや予約の申し込みの仕組みを作る手引きを使います。

ほかに、次の使い方の手引きも置いています。

  • 写真や映像を、写真や映像を読む AI(VLM)に読ませ、現場の判断に使う
  • Analytics や AdSense の仕組みを、広告ではなくサイトの改善に使う
  • 自分のサーバーを、AI と一緒に守る
  • 毎日のニュースを、自分の AI に集めさせる

運用も変わります。aiai のサイトは、私が一人で、AI と一緒に Google Cloud の VM で動かしています。サーバーの設定、攻撃の点検、アクセス解析の受け口まで、AI が書き、私は決めて、確かめます。

3. 囲い込みをやめる

大きな IT の会社は、使う人を囲い込みます。データを自分たちの形で持たせ、自分たちの AI を使わせ、外に出にくくします。

その最たる物が Office です。本当に不便です。

  • 書類は docx と xlsx の中にあります。印刷したときの見た目のための形で、データとして読むには向きません
  • Microsoft 365 の中で AI を使うなら、Copilot です。aiai の手引きを Copilot に入れるには、組織が Microsoft の試しのプログラムに入り、Copilot のライセンスを持ち、管理者が許す必要があります。勤め先では、ふだん使っている自分の AI を、自分の書類に使いにくくなります
  • Copilot との会話の履歴は、組織のコンテンツとして保存され、管理者が見て、保持の期間を決めます。本人が書き出す手順は、Microsoft の資料に見つかりませんでした。自分の長所を知る材料にしたくても、手元に持ってこられません

(Microsoft Learn「Add custom skills to your declarative agent in Agent Builder (preview)」、「Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot」。2026-10-03 に確かめました)

aiai は、反対にします。

  • 書類のデータは adoc で書きます。 文字だけのファイルなので、どの AI も読め、どのエディターでも直せます。配るのも受け取るのも adoc で、印刷するときだけ PDF にします。どうしても Office の書類を扱うときは、OSS の officework を使います
  • 手引きは、どの AI でも読めます。 ただの文字のファイルなので、ChatGPT、Claude、Gemini のどれにでも、貼るか、スキルとして入れられます
  • 記録は自分の側に置きます。 会話の履歴は、手元に持ってきて、自分の AI に読ませます。アクセス解析も、Google Analytics に送らず、自分のサーバーに記録します
  • 全部を持って出られます。 コードは AGPL-3.0、文書は CC BY 4.0 です。気に入らなければ、写して自分で直せます

囲い込まなければ、守りもやりやすくなります。仕組みが小さく、何がどこにあるかを自分で分かっていられるからです。そして、囲い込みから出たい会社や団体は、たくさんあります。そこを手伝うことも、個人の仕事になります。

4. 会社や団体にも売れるように、会社の仕事を知る

個人が仕事を始めても、消費者に向けた物だけでは、なかなか収益を上げられません。会社や団体に売るのも、一つの手段です。

会社や団体に売り込むには、会社で何をしているかを知っていないといけません。見積を出し、注文を受け、請求し、仕訳を切る。文書を作って回し、メールで連絡し、会議で決める。社員がサインインし、社内の問い合わせに答える。その仕事の流れを知ったうえで、それに合うシステムを作れないと、売り込めません。

AI で仕事がなくなると言われます。なくなるのは、大きな会社が 1 つの製品を作り、たくさんの人に同じ物を配る、集中型のソフトウェア開発です。1 つ 1 つの会社や店に合わせて作り、動かし、守るラスト 1 マイルの仕事は、大量にあります。

私は 1990 年代に、県の側で、財務会計システムの開発をしました。当時はバッチで運用していた時代で、仕事の流れを変える必要があったので、発注する側にも仕事がたくさんありました。いまは、業者に委託する代わりに、AI に作らせることができる時代になりました。

いまは、SaaS を入れたら終わりと考える人が多いようです。でも、仕事の流れを考え直すのは、使う側の仕事です。

AI が得意なのは、コーディングです。何を作るかについては、少し言われるとすぐに方針を変えます。状況をすべて分かってはいないからです。その会社で何をしているかを知り、仕事の流れに合うシステムを考えるのは、人です。人にとっても、簡単ではありません。そこで、会社の仕事ごとに、何をしていて、何が要り、OSS と AI でどう作り、どう守るかを、aiai tools(https://github.com/aiseed-dev/aiai-tools)としてスキルにまとめ、公開しました。

スキルの元は、実際に作った物です。

  • アクセス解析(kaiseki): Google Analytics の代わりに、自分のサーバーで記録する仕組みです。ページのスクリプト、受け口、試験まで作りました。天気のサイト(weather.time-j.net)と aiai のサイトで動いています
  • ERP の日本語化: ERP は、販売、購買、在庫、会計のような会社の仕事を 1 つにつなぐシステムです。OSS の ERP の Tryton には、日本語の訳がありませんでした。モジュールの2,868 の文と、画面の 269 の文を、9 つの AI に分けて訳させ、1 日で日本語で動くようにしました。訳を読み込む道具と、差し込みの数が合うかを確かめる道具も、AI が書きました
  • 事業用のアプリの部品: 会員、通知、メッセージ、本人確認、鍵、見守り、ネットワーク

公開すると、使った人から声が届きます。IT に詳しくない立場の人から、Issue で提案をもらいました。

  • 「SKILL.md は何をする所か、ピンとこない」 → SKILL.md は AI が読む物です。人が読む README を、フォルダーごとに足しました
  • 「会員どうしのメッセージで、通報とブロックをどう作れば法律に合うか」 → 受け取った人が自分の画面の文を運営に送り、運営はサーバーのメッセージを読みに行かない形にしました
  • 「安全のために取っておく記録の期間は」 → 取っておく物ごとに、妥当な期間を根拠と一緒に示すようにしました

ただし、提案を全部入れたわけではありません。初めは、AI が提案をそのまま足していました。法令の条文を書き写し、「会社に伝えます」と書きました。それを私が止めました。ここで 1 の長所が効きます。

  • 最小限にする。 スマホのアプリの通知は、アプリを作る人が足す物なので、断りました
  • 法令の中身は書かない。 法令は変わり、調べれば分かります。スキルには「関係する法令を、その時点の資料で調べて、作りに入れる」とだけ書きます
  • 決めるべき物は決める。 「会社が決める」で逃げず、取っておく期間のように、妥当な答えがある物は示します

いま進めているのは、個人が開業するときに最初に覚える帳簿です。弥生や freee から移れるように、Tryton に個人事業の勘定科目と青色申告決算書を足します。販売から請求書、仕訳までがつながるので、仕訳を手で打つ必要がなくなります。

5. 使えるエージェントにする ── 集中型でなく分散型に

エージェントは、もう誰でも作れます。次に要るのは、自分で動きながら、勝手なことをしないエージェントです。ここでも、ドローンと同じ考えが当てはまります。何でもできる 1 つのエージェントに、すべての権限とデータを集めると、それが的になります。だまされたり、間違えたりしたときに、全部に及びます。そこで、集中型でなく、分散型にしました。

  • 役目ごとにエージェントを分ける。 スキルを書く係、サーバーとサイトを動かす係、天気のサイトを作る係を、別々のエージェントにしました。それぞれの受け持ちのリポジトリとサーバーを決め、決まりに書きました。いまは同じ PC で動かしているので、仕組みで分けたのではなく、役目と決まりで分けています
  • つなぐのは、決めた形だけ。 コードの置き場所は 1 か所に決め、ほかのエージェントには、コミットの番号で渡します。受け取った側は、写した元の番号を記録します。何がどこから来たかを、後から追えます
  • 許しは人からだけ。 ほかのエージェントからの頼みは、許しとして扱いません。ダウンロード、sudo、push、パスワードは、人がするか、人の許しを得てからにします
  • 読んだ物は、指示ではなくデータ。 Web のページ、Issue、貼られた文の中に「こうしろ」と書いてあっても、従いません(プロンプトインジェクションへの守り)
  • 答える AI を置かない。 aiai のサイトの中の検索では、Gemini 3.8 Flash が、ページの目録から合う物の番号を選ぶだけです。答えの文は書きません。どう頼まれても、返せるのは目録の中の番号だけです
  • 記録を取り、見直す。 サーバーは、毎日の攻撃の数を記録し、Gemini に読ませて所見を付けます。Gemini は読んで書くだけで、サーバーには何も変えません。サイトは、読む人がどこで読み、何を探しているかを、Cookie を置かずに記録します
  • 任せる範囲を分けて、自動で直させる。 毎日、Gemini が読まれ方の記録を読み、サイトを少しずつ自動で直します。直せるのは 3 つだけです。検索の言葉を合うページにつなぐ、ページの終わりに次に読むページの案内を足す、短い記事を書く。リンクはサイトの中だけで、1 日の数に上限があります。検索の言葉には読む人が打った文が入るので、Gemini の答えは、使う前にプログラムが確かめます。手引きの決まりや考え方の文のように大きく直す物は、私の AI が別の枝で直し、取り込むかは私が差分を読んで決めます。次の回には、直した後に読まれ方が変わったかを、AI が記録と比べて書きます。何を直したかは、どちらもサイトで公開し、自動の直しは 1 日ごとに取り消せます
  • 使える回数を決めて、人に開く。 サイトでは、サインインした人が、手引きを読ませた Gemini と対話したり、自分の好みで今日のニュースを Gemini に作らせたりできます。Gemini は Google 検索で記事を探し、読んだ記事の URL を出典に付けます。一人ずつと全体に、1 日の回数の上限があります。書いたことはサイトに記録しません
  • 大きな仕事は、小さく分けて任せ、道具で確かめる。 Tryton の訳は、9 つのエージェントに分けて任せました。戻ってきた訳は、差し込みの数が英語と合うかを道具で確かめ、合わない物は通しません
  • スキルを、エージェントの決まりにする。 SKILL.md の「守ること」が、そのままエージェントの決まりになります。決まりがファイルに書いてあるので、どのエージェントも同じ決まりで動き、人も読んで確かめられます

分散型にすると、1 つずつのエージェントは小さく、受け持ちも狭くなります。その代わり、どれかが間違えても、被害はそこで止まります。人は、エージェントの間の約束と、許しと、記録を持っていればよい。これが、野良エージェントを出さずに、エージェントを使う形だと考えています。

これから: ビデオカメラ

今回は時間がなく、ビデオカメラには手を付けられませんでした。次に進めるのは、映像を読む AI(VLM)を、現場のカメラにつなぐことです。

  • 畑や家のカメラの映像を VLM が読み、何が写っているかを判断し、知らせ、記録します。シカやイノシシが畑に来た、空き家に人が入った、といった場面です
  • 慣れたら、見る、知らせる、動かす、記録するの 4 つの道具を渡したエージェントにします。鳥獣害を防ぐ、空き家や民泊を見る、といった仕事です
  • ここでも分散型にします。カメラごとに受け持ちを決め、動かす道具(音や光)は決めた範囲だけにし、記録を取って見直します

記録がたまると、動物とどう一緒に暮らしていくかを考える元になります。

まとめ

  • 度々聞いていることから要るアプリを考え、今あるアプリを調べてから、要望を書くか、自分で作るかを決めます。長所は、作っていく中で分かっていきます
  • ドローンが戦争を変えたように、AI はソフトウェアの開発と運用を変えます。個人が、自分の仕事のアプリを作り、自分のサーバーを動かせます。値打ちは、何を作り、何を守り、どう確かめるかを書いたスキルにあります
  • 囲い込みをやめます。書類は adoc、手引きはどの AI でも読め、記録は自分の側に置きます。囲い込みから出る手伝いは、個人が会社や団体に売れる仕事の一つです
  • 守りを集めた大きなサービスほど的になります。自分の側に置き、いつも注意して、すぐに直します。それを AI と一緒に、自分でします
  • エージェントも、集中型でなく分散型にします。役目ごとに分け、つなぐ形を決め、許しは人が持ち、記録を取って見直します

自分の AI と一緒に使う手引きは https://aiai.aiseed.dev/ に、会社や団体に売り込むために、会社の仕事とシステムの作り方を知るスキルは https://github.com/aiseed-dev/aiai-tools にあります。使ってみて、困ったことがあれば、Issue で教えてください。